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肝細胞癌[私の治療]

No.5242 (2024年10月12日発行) P.37

池田公史 (国立がん研究センター東病院肝胆膵内科科長)

登録日: 2024-10-09

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  • 原発性肝癌のうち,約90%が肝細胞癌であり,一般に肝癌と言えば肝細胞癌のことを指す。肝細胞癌は,その大部分がC型肝炎ウイルスまたはB型肝炎ウイルスの持続感染による慢性肝炎や肝硬変などを背景に発生するが,近年,非アルコール性脂肪肝疾患からの発症も増加傾向である。

    ▶診断のポイント

    肝細胞癌は豊富な腫瘍内新生血管が特徴で,造影CTなどで,早期造影効果があり,門脈・平衡相で低吸収域(washout)となる造影パターンを示す。また,門脈や肝静脈に浸潤し,腫瘍塞栓を形成することも特徴である。腫瘍マーカーとしては,AFP,PIVKA-Ⅱ,AFP-L3が有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    肝細胞癌の治療は,肝切除,肝移植,放射線療法,穿刺療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE),肝動注化学療法,全身薬物療法が行われる。一般に,単発または癌結節が3cm以下,3個以下であれば肝切除か肝移植,穿刺療法,多発する場合はTACE,脈管侵襲や肝外転移がある場合は薬物療法が推奨される。

    【肝切除】

    侵襲性が高いが,局所制御性において最も確実性の高い治療法である。肝障害度に応じて切除適応を決定する。最近,腹腔鏡下肝切除も行われ,侵襲性も改善された。

    【肝移植】

    肝機能が不良で,肝外転移がなく,ミラノ基準(単発では腫瘍径5cm以下,多発では3個以下で腫瘍径が3cm以下)または5-5-500基準(腫瘍径5cm以下かつ腫瘍数5個以下かつAFP 500ng/mL以下)を満たす例が適応となる。日本では肝臓のドナー不足のため,生体肝移植がしばしば行われている。

    【放射線療法】

    体幹部定位放射線治療や陽子線,重粒子線などの粒子線治療があり,局所制御率が高いのが特徴である。体幹部定位放射線治療は腫瘍径が5cm以下で転移病巣のない原発性肝癌,粒子線治療は4cm以上の肝細胞癌に保険適用となっている。

    【穿刺療法】

    腫瘍を穿刺し熱で焼灼する治療で,ラジオ波焼灼術がよく行われている。一般的な適応は腫瘍径3cm以下,腫瘍数3個以下。侵襲が少なく,切除に匹敵する治療効果が得られる。

    【TACE】

    がんを栄養する肝動脈にカテーテルを挿入し,抗癌剤と塞栓薬で動脈を遮断して,がんを「兵糧攻め」にする治療法。切除や穿刺療法に比べて治療成績が劣るため,切除や穿刺療法が困難な例や多発例が対象となる。

    【肝動注化学療法】

    高濃度の抗癌剤を肝動脈内に直接投与し,がん局所での抗癌剤濃度を高めることで,高い腫瘍縮小効果と全身の副作用の軽減が期待できる治療法。日本では,シスプラチン,5-フルオロウラシル+シスプラチンなどがよく用いられる。

    【全身薬物療法】

    一次治療としてソラフェニブ,レンバチニブ,アテゾリズマブ+ベバシズマブ,デュルバルマブ+トレメリムマブ,デュルバルマブ単剤,二次治療としてレゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブが保険適用である。一次治療では,アテゾリズマブ+ベバシズマブとデュルバルマブ+トレメリムマブの治療効果が高く,第一選択である。両者は免疫を賦活化する治療である。自己免疫疾患などでこれらが選択困難な場合に,ソラフェニブやレンバチニブが選択される。二次治療以降では,一次治療で使用されなかった薬剤が選択される。

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