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【識者の眼】「妊婦・妊娠中の女性のアルコールリスクをゼロにする」松﨑尊信

No.5245 (2024年11月02日発行) P.64

松﨑尊信 (国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)

登録日: 2024-10-10

最終更新日: 2024-10-10

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妊婦・妊娠中の女性の飲酒

先日、厚生労働省主催の依存症啓発イベント「特別授業! みんなで学ぼうお酒のこと in 福岡2024」に参加しました。ここでは、『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』について学ぶため、一般の方にもわかりやすいよう、タレントの方と一緒にお酒にまつわる知識について情報発信するトークイベントを行いました。私もいくつかのテーマについて解説しましたが、その1つが、妊婦・妊娠中の女性の飲酒についてです。

一般的に、女性は男性と比較して体内の水分量が少ないため、分解できるアルコール量も少なく、エストロゲン等の働きによってアルコールの影響を受けやすいとされています。また、妊娠中の飲酒は、胎児性アルコール症候群(妊娠中の母親の飲酒により引き起こされる、胎児・乳児の低体重や、顔面を中心とする形態異常、脳障害など)や発育障害を引き起こすことが知られています。これを予防しうる安全な飲酒量はいまだに不明なため、妊娠中または妊娠を計画している女性は飲酒をしないことが求められています。

厚生労働省は、健康増進法に基づいて国民の健康増進の総合的推進を図るための基本的な方針を定め、2013〜22年度まで「21世紀における国民健康づくり運動(第二次)〔健康日本21(第二次)〕」を推進しました。この中には、国民の健康増進を形成する基本要素として、栄養・食生活、身体活動・運動などと合わせて、飲酒に関する指標も数値目標の1つとして設定されました。妊娠中の飲酒の割合は、2010年は8.7%でしたが、2019年の最終評価時で1.0%まで低下していました。

しかし、いまだ、すべての妊婦の飲酒がゼロでない状況について、妊娠中のアルコールリスクが一般の方にまだ十分に認知されていないのか、あるいは知っていたとしてもお酒をやめられない人が一定数いるのかもしれません。いずれにしても、引き続き、私たち医療従事者は、妊娠中の女性の飲酒の割合をゼロにするために、一般の方へのアルコールに関する知識の普及啓発を継続するとともに、お酒をどうしてもやめられない人への回復支援を行う必要があります。私たち1人ひとりが、周囲の人へアルコールリスクを伝えていくことによって、国民の健康を守るとともに、将来的な子どもの成長・発達のリスクを減らすことにも繋がります。

松﨑尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科診療部長)[妊婦][飲酒][胎児性アルコール症候群][健康日本21]

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