本書は,普段の診療における疑問に答える形で執筆された腎臓内科の教科書です。腎臓への理解を深めるため,随所に工夫が凝らされており,その内容には驚かされます。まず,大きな単元として慢性腎臓病(CKD),急性腎障害(AKI),透析領域に分かれている点が挙げられます。腎臓専門医にとっては,腎臓病専門外来を行う上で重要な疾患が網羅されており,非専門医や研修医などの若手医師にとっては,CKDやAKIの章だけでも,保存期腎臓領域における実地診療のほとんどをカバーできる内容となっています。
特にCKDの第1章では,腎機能をどのように診るかについて,糸球体濾過量(GFR)の測定方法から,長期eGFRプロットによるスロープの重要性が詳しく説明されており,日常診療に役立つ内容から執筆が始められています。“column”や“覚えておきたい!”などのコーナーが随所に設けられ,ちょっとした実臨床での疑問の解決に非常に役立ちます。
各章には,themeとして実地医家が腎臓領域において疑問を抱いている内容が取り上げられ,それぞれがエビデンスと著者の臨床的な“勘”を交えて解説されています。そのため,まるで日常の腎臓診療をこの1冊でこなせるような感覚を得られるでしょう。さらに,専門医でも疑問に思うような内容,たとえば「ESAとHIF-PH阻害薬の使い分け」などについても丁寧に説明されています。
図やイラストが随所に用いられており,視覚的にもわかりやすく,表も見やすいので,参考書として診療中にさっと開いて診断や治療に役立てることができます。実地医家から専門医まで,この書籍を参考に幅広く腎臓診療を極めてください。