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【書評】『小児循環器入門』小児循環器学のon-the-job trainingの書

No.5248 (2024年11月23日発行) P.68

岡 明 (埼玉県立小児医療センター病院長)

登録日: 2024-11-20

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私は,生まれて初めて小児循環器の教科書を通読した。それも,仕事中につい取り上げて読み始めたら,意図せず本書の最後まで読んでしまった。これは,編集された先生方の思う壺にはまったとも言えるかもしれない。このような医学教科書に出会ったことは,あまり経験がない。

小児循環器を専門としない私のような小児科医が十分に理解できたと言うのはおこがましいが,各項目を執筆した先生方の熱感や論点が明確に伝わってきて,その主旨に納得したり,あるいは考えさせられたり,そうした繰り返しで,まさに読みだしたら止まらない“page turning”の状態を経験した。気づいたら最終章に到達し,最後の編者のあとがきまで読んでしまった。

本書では,あえて網羅的な教科書の様式はとられていない。疾患名が並び,それぞれに疫学や病態や症状や治療法が順番に記載されているわけではない。その代わりに,日頃から筆者らが,若手医師や学生などにこれだけは伝えたい,あるいは小児科医や小児循環器の医師に押さえておいてもらいたいと臨床現場で思っていることを選択し,まとめるという方針がとられている。編集にあたっては,患者さんの生涯・時間という軸に沿った課題の取り上げ方と,外科,多職種,移行期,胎児・新生児といった臨床の広い視点をミックスすることによって,小児循環器学のon-the-job trainingを1冊の成書の中で成し遂げようとしている。

最後までつい読んでしまった私からすると,本書のそうした教育的な編集意図は成功していると思われる。

本書は小児循環器疾患に関わる若手医師にとって必携であるだけでなく,医学生や関連する多職種の方々にとってもきわめて有用で,幅広く使って頂きたい書である。私も,改めて,必要な際に本書をリファレンスとして使用していきたいと思っている。

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