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胃瘻をするかどうか迷っている場合[たんぽぽ先生の〈パターンで考える〉在宅医療の実践(5)]

No.5256 (2025年01月18日発行) P.47

永井康徳 (医療法人ゆうの森たんぽぽクリニック)

登録日: 2025-01-16

最終更新日: 2025-01-14

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日本は世界一の胃瘻大国

在宅医療の対象となる患者は,既に食べることが困難であるか,近い将来食べられなくなる方がほとんどで,食べられなくなったらどうするかは,在宅医療や意思決定支援における重大なテーマです。

胃瘻は,長期にわたり経口摂取ができない患者や,食べてもむせて誤嚥する患者への栄養投与のために,腹壁と胃腔の間につくった瘻孔にチューブを通して,直接胃の中に栄養を注入する方法です。現在,日本で新たに胃瘻造設をする患者は年間20万人,胃瘻栄養を行っている患者は40万人以上とも言われ1),高齢化が進む中で,さらに増加すると考えられています。これは世界でも類を見ない数で,日本は世界一胃瘻患者の多い,胃瘻大国と言われています。

一方,最近では延命治療の手控えや満足死などの考え方が浸透してきて,「胃瘻=延命治療」という考えも広がり,食べられなくなったときに胃瘻を選択しない患者さんやご家族も増えてきました。胃瘻を選択しない場合に,医師が経鼻栄養チューブを提案するケースも多くなりました。胃瘻造設ができない理由がある場合はともかく,人工栄養を行うならば,経鼻栄養ではなく,胃瘻栄養のほうが管理の手間がかからず,本人の負担も少なく,経口摂取を併用するにもメリットが大きいです。患者さん本人やご家族が胃瘻栄養を選択しないのは,延命治療を希望しないという意思表示が主な理由だと思うのですが,「何もしない」という自然な看取りの選択と医師が向き合えないために,経鼻栄養や末梢輸液の持続点滴という選択肢を提示してしまうことが多いのだと思われます。様々なメリットやデメリットを勘案すると,長期間の人工栄養を提案する際のメインの選択肢は胃瘻栄養ですが,必ずしもそうなっていないのが現状です。

胃瘻をするという選択肢もあれば,しないという選択肢もあると思います。すべての人工栄養の選択肢について,メリットとデメリットを提示しながら説明し,人工栄養をしない自然な看取りの選択肢も提示した上で,患者さんやご家族が何度迷っても,一緒に悩みながら考えていく姿勢が医療者には求められます。

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