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古くて新しい貧血の話 [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(99)]

No.4804 (2016年05月21日発行) P.73

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2016-07-08

最終更新日: 2017-01-24

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  • いろいろな内容の講義をするが、貧血はいちばん好きなテーマのひとつである。ありふれた病態であるが、内容が豊富なのだ。その貧血の研究で1934年にノーベル賞が与えられていることはご存じだろうか。

    病理学者ウィップルは、繰り返し瀉血をおこなった犬の貧血は、肝臓を食べさせることによって改善できることを発見した。今の知識でいうと、鉄欠乏性貧血が肝臓に多く含まれる鉄で治ったということなのだが、そんなことすらわかっていなかった。

    この研究にヒントを得て、マイノットとマーフィーは、当時、致死率がほぼ100%であった悪性貧血の患者に生焼けの肝臓を食べさせ、信じられないほどの治療成果をあげた。これも後知恵でいうと、肝臓に多く含まれるビタミンB12によるものだが、当然、それも知られていなかった。

    このびっくりするほど単純な研究に与えられたノーベル賞の受賞理由は「貧血に対する肝臓療法の発見」である。メカニズムはまったくわからなかったが、致死性の疾患に対する治療法を見いだしたことが評価されたのだ。当然の受賞だろう。

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