筋性斜頸(congenital muscular torticollis)の発生率は全出産の約0.3~0.5%で右側罹患がやや多く,性差については男児より女児にやや多い1)。発生要因には分娩時の外傷説や胎内の姿勢異常,炎症,阻血など諸説あるが,現在も一定の見解が得られていない。骨盤位分娩や難産児に多く,家族内発生例の報告もあるが,遺伝との関係性は不明である1)2)。
新生児期,乳児期には斜頸位よりも頸部の腫瘤に気づき,受診する場合が大部分である。そのため,小児科医や,乳児健診から紹介されるケースがほとんどである。頸部の腫瘤は出生後1週間前後より出現して徐々に増大し,生後約3週間で最大となる。同時に頭部が患側(腫瘤側)に傾き,顔面が健側を向いて斜頸位を呈する。
頭部の変形があるか否かは,先天性かどうかの判断のため重要である。就寝時の頸の向きについて,家族から聴取することも鑑別の手助けとなる。
約90%は自然治癒するため,経過観察でよい。しかし,ただ放置するのではなく頭蓋変形の予防や頸部運動を自然に促す目的で,寝かせ方や授乳の仕方などの育児指導が必要である。また,斜頸位により股関節の開排制限を伴いやすく,股関節脱臼や臼蓋形成不全に留意すべきである。自然治癒を期待できるのは1歳半くらいまでであり,それ以降は症状の改善は見込めない。
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