(概要) 医療保険制度改革関連法が参院本会議で成立した。国保への財政支援や医療費適正化計画などに加え、新たな保険外併用療養制度となる「患者申出療養」の創設も盛り込まれた。
参議院本会議は5月27日、医療保険制度改革関連法案(正式名称「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」)の採決を行い、賛成多数で可決、成立した。
同法案は医療保険制度の持続可能性を高めることが目的で、国民健康保険への財政支援拡充や負担の公平化、外来の機能分化、医療費適正化計画の実施などが柱だ。これらに加え、新たな保険外併用療養制度となる「患者申出療養」の創設も盛り込まれた。主な施策と開始年度は別掲の通り。
同法に基づき、2015年度からは国保の財政支援を年間1700億円に拡充、17年度以降は3400億円を投入する。さらに国保改革の一環として、財政運営主体を18年度から都道府県に移管。都道府県の地域医療構想と整合性のある地域医療計画を策定することで計画の実効性を高める。
このほか、外来の機能分化推進の観点から、紹介状なしで大病院を受診した患者に対し、初再診時の定額負担を導入する。金額は今後中医協などで詰めるが、5000~1万円の間となる見通しだ。また、入院時食事療養費については、自己負担額を現行の1食260円から16年度に360円、18年度からは460円へと段階的に引き上げる。
●患者申出療養導入に懸念相次ぐ
同法案は圧倒的な勢力を誇る与党の賛成で成立したが、法案を審議した衆参両院の厚生労働委員会質疑では、患者申出療養について野党議員が制度の矛盾を指摘。「混合診療の実質的解禁」「安全性の確保が困難」などと懸念する声が相次いだ。
患者申出療養は、国内未承認薬などを迅速に保険外併用療養として使用できるようにするために導入される仕組みで、保険収載を前提とする。しかし、臨床研究中核病院の協力医療機関となれば身近な医療機関でも実施できる。そのため、参院厚労委員会の参考人質疑で石黒直樹名大病院長が、「審査体制と管理体制のないところで集められたデータの信頼性は疑われる」と指摘したように、保険収載に至らない技術が増える可能性も高い。
厚労省は実施医療機関に対し、保険収載に向けた工程表の作成や提出、年1回以上の進捗状況の報告を求めているが、工程表通り進んでいない場合は、患者申出療養からの除外を視野に入れた対応も必要になりそうだ。
【記者の眼】患者申出療養は安倍首相肝いりの制度。小池晃参院議員が苦しい答弁を繰り返す厚労省の唐澤剛保険局長に「上から押しつけられて本当はやりたくないからそんな答弁になるのでは」と指摘すると、与党議員からも笑いが漏れた。核心をついた指摘だったのではないか。(T)