(概要) 第135回日医定例代議員会が6月28日、開催された。来年4月に控える次期診療報酬改定や総合診療専門医、控除対象外消費税、医療事故調などを巡り質疑が交わされた。
第135回日本医師会定例代議員会が6月28日、開催された。開会の挨拶に立った横倉義武会長は、政府の社会保障費抑制方針を踏まえ、次期診療報酬改定について、「非常に厳しい対応を迫られることが予想される」とした上で、「日医としての考え方を毅然と主張していく」と強調した。
横倉会長はこのほか、昨年6月の再選時から取り組む日医の「組織力の強化」について説明。「今年度から研修医会員の年会費減免と医師資格証の無料化を実施している」と述べた。また、非会員向けに医師会サービスの一部を一定期間無償提供する仕組みづくりに取り組んでいることも紹介した。
●「予算編成で必要財源の確保求める」
代表質問では、徳永宏司氏(中部ブロック)が、改めて政府の社会保障費抑制方針に対する日医の考えと次期改定の財源について質問した。
横倉会長は、「過去3年間の社会保障費の伸びが高齢化分に相当する1.5兆円程度に収まったのは、医療側が医療費適正化に努力した結果でもある。医療費は医療の高度化によっても増加するので、キャップをかければ必要な医療を提供できなくなる恐れがある」と述べ、年末の予算編成に向け政府に必要財源の確保を求めていくとした。
薬価改定財源を診療報酬本体に充当する措置については、「日本の医療費では、薬剤と医療機器などモノが占める割合が大きい。医療に携わる人すなわち技術料の評価への転換を主張していきたい」と回答した。
●院外処方の患者負担と報酬格差を問題視
現在の医薬分業のあり方に疑問を呈したのは馬場恵介氏(九州ブロック)。馬場氏は処方料について、院内処方(42点)と院外処方(68点)に格差があり、「患者負担は平等であるべき」と訴えた。一方、かかりつけ医を評価する地域包括診療料/加算で院内処方が原則とされたにもかかわらず、院内処方では、後発医薬品調剤体制加算や時間外等加算などが算定できないことを問題視。結果的に院外処方では、患者の自己負担に加え、院外に出向く身体的負担も増える仕組みになっていると指摘し、「診療報酬の是正」が必要と述べた。
これに対し、中川俊男副会長は、院外処方には「重複投薬の抑制や薬剤への患者理解が深まるなどのメリットがある」と説明。一方で、デメリットとして、「高齢者の院外への移動は大きな負担」とし、患者自己負担についても「薬剤料を除く調剤と処方に関する自己負担額を比較すると、院外処方は院内の3倍から4倍になるケースもある」と指摘。こうした現状を踏まえ、「行きすぎた医薬分業は押し戻す」と強調した。
●消費税「ネガティブキャンペーンの恐れ」
利根川洋二氏(関東ブロック)は、医療機関の仕入れにかかる消費税について「診療報酬への補◆が十分でなく、医療機関の持ち出しになっている」とした上で、現状を「解決に向かっているように思えない」と指摘。解決策を質した。
今村聡副会長は、「夏頃から開催される中医協の消費税負担に関する分科会が解決の場になる」と説明。時期については、「医療界で団結して、10%引上げ時の解決を目指している」とした。
具体的取り組みとして、日医の会内に財務省と厚労省が参加する検討会を設置し、課税転換時に求められる消費税負担の“見える化”に向けた議論を進めていることを紹介(12頁に関連記事)。しかし、「取り組みが伝わっていないことが分かった。情報発信が十分でなかった」と述べ、今後、積極的な情報発信に努めていく考えを示した。
今村副会長は今後の見通しとして、軽減税率など医療の課税転換が国民の負担増につながると受け止められる可能性を指摘。「ネガティブキャンペーンが展開される恐れがある」と懸念した。
●事故調「報告書作成には十分すぎる配慮を」
今眞人氏(北海道)と西田芳矢氏(兵庫)は、10月から始まる医療事故調査制度に関して、制度の趣旨が個人の責任追及でないとされながら、院内調査報告書が司法の判断材料に使われる懸念が依然残っているとして、日医の見解を質した。
今村定臣常任理事は、報告書の冒頭に同制度の目的が医療安全の確保であると記載できることを強調。一方で、「現状、民事・刑事の責任追及に用いることに制限はない。当事者の過失や責任の証拠材料とならない報告書を作るよう関係者へ啓発・研修を重ねる」とし、報告書作成の際には医療関係者に「十分すぎるほどの配慮を求めていく」と述べた。
また、日本医療法人協会がガイドライン(GL)を作成したことや、来年6月までに医師法21条の改正の是非を含めた制度の見直しが行われることへの「現場は何を基準に動けばよいか混乱している」との指摘に対し、今村常任理事は「各団体のGLはその団体の解釈を示したもので、当局や法律にオーソライズされたものではない。日医も支援団体として、どこに留意すべきかなど、会内の委員会で検討し、できれば制度発足前に示していきたい」と述べた。
●かかりつけ医と総合診療医「別の概念」
総合診療専門医とかかりつけ医の位置づけについては、鹿島直子氏(鹿児島)、小野晋司氏(京都)が質問した。
小森貴常任理事は、厚労省検討会報告書で、都道府県医師会や郡市区医師会が推薦した医師が指導医になると記載されるなど、「その養成は地域医師会の協力なしには成り立たない」と強調。併せて日医は生涯教育制度の改革を行い、地域包括診療加算など算定に必要な研修参加証明の一元管理を来春には開始できるよう、検討を始めたことを明らかにした。
一方、釜萢敏常任理事は、「かかりつけ医は資格制度とは別の概念として、日医がその育成と質向上に引き続き取り組む」として、すでに実態として地域医療に貢献してきた医師が「新たに総合診療専門医を目指す必要はさらさらない」と明言した。
しかしフロアからは安達秀樹氏(京都)が、「我々会員の間には、総合診療専門医が将来において診療報酬の評価の区別・差別につながる、その資格を標榜して診療所を開設する、という不安がある。執行部は『当面はない』と回答するだけで、完全には否定できないではないか」と強い懸念を示した。
これに対し中川副会長は、「不安があるのは間違いない」としながら、「(現状は)診療報酬の中で専門医を評価する点数はないが、かかりつけ医については前回改定でそれ自体を評価する点数が創設され、塩崎厚労相も『かかりつけ医を評価する』と明言している。日医は(会員の)不安を少しでも払拭する活動を今後も強力に進めていく」と述べ、理解を求めた。
このほか、羽鳥裕常任理事が、学校保健安全法、安衛法、高齢者医療確保法を根拠とする各種保健事業を「生涯保健事業」として体系化するため、「日医健診標準フォーマット」を今年度中に本格運用する考えを表明。現在、全国13カ所の医師会共同利用施設で、健診データ一元管理のための変換作業を進めていることを明らかにした。
【記者の眼】代議員会では平均在院日数について北海道の藤原秀俊氏が豪雪や台風などの自然災害が影響すると指摘。今後も7対1病床削減に向け、調査上余裕のある平均在院日数が短縮される可能性は強いが、次期改定ではこうした場合の特例など柔軟な対応も必要ではないか。(T)