私の部屋の壁に飾られた1枚の写真。iPicssの画面と超音波画像が写し出されている。この写真は単なる記録ではなく、医療連携の重要性を示す証だ。
我々が2018年に開発したiPicss(アイピクス:妊産婦緊急搬送補助システム)は、施設間の連携を円滑にし、治療開始までの時間を短縮することで、延命につながる可能性があることを証明した。2019年5月より、岡山県の全分娩取扱施設にiPicssが導入された。分娩後異常出血関連の搬送時には97%で活用され、県内使用率は90%を超えている(2025年3月時点)。搬送情報の共有におけるiPicssの利用は、標準的な対応となっている。
ある夜、35歳の妊婦、G4P3、子宮破裂疑いでの搬送依頼。時計は20時25分を指していた。緊急手術の合間をぬって救急患者対応に追われていた私のもとに入った一報だった。
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