(概要) 控除対象外消費税問題の解決に向け、中医協分科会での議論が再開した。診療側は補填不足を主張する一方、支払側は14年度改定の補填額の妥当性を検証するよう求めた。
中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(田中滋分科会長)が7日に開かれ、中医協の場で医療機関の控除対象外消費税問題を巡る議論が再開した。同分科会の開催は、消費税率8%への引上げが行われた2014年度診療報酬改定での対応をまとめた14年1月以来。
14年度改定の「2600億円」の妥当性検証
この日は厚生労働省がこれまでの対応の概要を説明。14年度改定では、消費税率が5%から8%に引き上げられることを踏まえ、医科本体に控除対象外消費税への対応として約2600億円が補填されたとした。
支払側の白川修二委員(健保連)が今後の検討材料として重要視したのは、14年度改定の影響について。14年度改定では医科本体への消費税対応分とされた2600億円が、薬価引下げによる財源と同額だったことから、「あまりにも不自然で今でも気になっている」と指摘。予算編成過程における改定率を巡る交渉の中で、数字合わせに使われた可能性を示唆した。こうした状況を踏まえ、マクロな視点から補填額の妥当性を検証するよう要請した。
一方、今村聡委員(日医)は、5%への引上げ時にマクロでの大きな補填不足があったとして「そうならないように2600億円が手当された」と金額の妥当性を強調。今後の議論では、厚労省が「必要な額を確保して上乗せしている」としつつ、「(数回の改定を経たことで)現時点の正確な実態把握は難しい」とする、消費税導入時と過去2回の税率引上げ時の計3回の対応についての検証が大きな論点となる。
こうした議論の資料となるのが14年度改定の補填状況の調査。支出の分析については、14年度医療経済実態調査のデータを用いる。補填分については、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)から抽出した算定回数などのデータを用い、これらのデータを突き合わせ、11月をメドに開設者別、病院機能別、入院基本料別に補填状況の調査結果をまとめる予定だ。
日医検討会の議論も今後の検討材料に
日本医師会は現在、消費税負担の「見える化」に向けた検討会を開いているが、意見交換ではこの会の存在が話題に上った。検討会に財務省や厚労省の幹部が参加していることを踏まえ、白川委員が「日医の検討会で案を固めて、『これで決まりました』と持ち出されても困る」と牽制。これに対し今村委員は、「(与党税制改正大綱に盛り込まれた)見える化に向け作業を進めているだけで、結論めいたことを決める会ではない」とした上で、検討会で実施している診療報酬の原価構成の把握に向けた調査結果などを、9月以降に参考資料として提示する方針を示した。
【記者の眼】分科会では消費税負担の「見える化」に向けた検討も行う。見える化については、日医検討会で診療報酬の原価構成の把握調査の中間報告が出たところだが作業は困難を極めている。しかし、課税転換には不可欠な作業だけに支払側を含めた建設的な議論を期待したい。(T)