(概要) 14年度診療報酬改定による医療機関の経営状況の変化が明らかとなった。実質的なマイナス改定だったことから、損益では診療所が微減、病院は赤字が拡大する結果となった。
2014年度診療報酬改定前後の医療機関の経営状況や常勤職員などの年収を調査する「医療経済実態調査」の結果が4日、公表された。同調査は厚生労働省が、全国の病院2578施設(有効回答率52.9%)、一般診療所3111施設(同52.6%)などを対象に実施。14年4月から15年3月末までに終了した事業年(度)と、13年4月から14年3月末までに終了した事業年(度)の2期間について調査した。次期改定に向けた議論の基礎資料となる重要なデータだ。
14年度改定の改定率は0.1%。消費税率8%への引上げに伴う対応分を除くと、1.26%のマイナス改定だった。
●初再診料引上げによる影響は軽微
診療所は収益がほぼ横ばい、損益率は概ね微減となった。損益率は、「入院診療収益なし」が16.1%(前年度比△0.5ポイント)、「入院診療収益あり」が11.7%(同△1.1ポイント)。全体では15.5%(同△0.6ポイント)となった(別掲)。
14年度改定では消費税率8%への引上げに伴う対応として、初再診料などの基本診療料が引き上げられたが、収益で見ると、個人立が4万3000円の増加、医療法人立が20万6000円の減少とわずかな変動となっている。
●急性期では補填不足による赤字拡大
一方、設備投資や消耗品などが多額な病院は、控除対象外消費税の負担が大きい。一般病院の損益率はマイナス3.1%となり、改定前のマイナス1.7%よりも、1.4ポイント悪化した。特に国立と公立の悪化が目立つ。
入院基本料別の損益率では、7対1病床(平均病床数329)がマイナス3.3%(前年度比△1.5ポイント)、10対1病床(平均病床数168)がマイナス5.4%(同△2.1ポイント)と、急性期病床の赤字幅が拡大しており、消費税率引上げへの補填が十分でないことを示唆する結果となった。
●診療所院長の収入は0.5%減少
給与の状況については、診療所では医療法人立の院長が2913万5115円、個人立の医師が1192万1668円で、ともに改定前から0.5%の減少。医療法人立の診療所医師は1215万2637円と2.6%増加した。
一方、病院長では医療法人立病院長の2930万4083円が最も高く、次いで公立病院長の2069万861円、国立病院長の1933万6117円となり、いずれも改定前よりも増加した。
これらの調査結果を受け、診療側・支払側がともに11月中旬をメドに意見をまとめ、中医協で議論を行う予定だ。
【記者の眼】やはり控除対象外消費税負担により急性期病床の損益は大きく悪化した。現在与党では軽減税率導入を巡る議論が活発化しているが、できるだけ対象を絞る方向で調整が進んでいる。診療報酬での手当に限界が見えた以上、医療に関しては還付案を含め抜本的な政策転換が必要だ。(T)