(概要) 前回改定で新設された地域包括診療料/加算の対象患者が拡大する。急増する認知症患者への対応が重要として、認知症とその他の疾患を有する患者を対象とする方針だ。
主治医機能の評価として、前回2014年度診療報酬改定で新設された地域包括診療料/加算の対象患者が、拡大される見込みとなった。
現行は、(1)高血圧症、(2)糖尿病、(3)脂質異常症、(4)認知症─の4疾患のうち2つ以上を有する患者が対象。しかし認知症患者は消化器や運動器、循環器などの様々な慢性疾患を合併し、複数の医療機関を受診することが多いという実態を踏まえ、(1)~(3)以外の疾患を抱える認知症患者について、新たに評価の対象とする方向性について概ね了承した。
●算定患者の疾患では認知症が最少
18日に開かれた中央社会保険医療協議会総会(田辺国昭会長)では、厚労省が地域包括診療料/加算の現状について報告。対象疾患別の算定患者は、同診療料/加算ともに高血圧症が最も多く、脂質異常症、糖尿病、認知症の順となっている。
認知症については政府が打ち出す認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で、認知症疑い患者の発見や専門医・専門医療機関への紹介など「かかりつけ医」の対応が重要としており、厚労省は介護との連携を含む認知症患者への対応を、主治医機能の役割の柱に位置づけることが狙いとみられる。
対象拡大への反対意見はなかったが、争点は要件設定となる。認知症患者では多剤投与が有害事象発生の要因となっていることから、厚労省は、「多剤投与の適正化」を要件に加える案を提示。これに対し、松本純一委員(日医)は「認知症の高齢者は(多剤投与が)やむを得ない場合もあり不合理」と反対した。
●届出施設数は前年から減少傾向
地域包括診療料は月1回の算定で1503点と高点数にもかかわらず、今年7月時点で届出が93施設にとどまり、前年比でも2割以上減少していることが明らかとなった。これを受け、かねて「要件が厳しすぎる」と訴えていた中川俊男委員(日医)は、「(届出施設数が)減少していることを重く受け止めるべき」と強調、要件の緩和を求めた。
●診療側「医療機関は総じて経営悪化」
20日の中医協総会では、医療経済実態調査(実調)に関する診療側、支払側の見解が発表された。
診療側は一般病院、一般診療所の損益率がともに低下したと指摘。その上で民間の一般病院では給与水準が抑制される一方、給与費率は上昇しており、「医療関係職種の増員に見合う収入が手当されていない」と分析した。前回改定が消費税率引上げへの対応を除くと実質1.26%のマイナス改定であったことから、「医療機関は総じて経営悪化」とした。
支払側は、診療所について前回・前々回調査に比べて高い水準で安定的に黒字が続いていると分析。中川委員は支払側の見解について、「実調は改定ごとの影響をみる調査。中期的な経年調査として前回・前々回と比較するのはおかしい」と問題視した。中医協は今後、診療側、支払側の見解を踏まえ、次期改定の意見書を12月中旬に取りまとめる予定だ。
【記者の眼】地域包括診療料/加算の届出施設減少は、要件の「関係団体主催の研修を修了していること」の経過措置が終了したことが大きいとみられるが、点数が実態に即していないか、魅力が少ないことも要因の1つだろう。認知症以外にも実効性ある要件への見直しが課題になる。(T)