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肝細胞癌治療におけるバルーン閉塞下肝動脈化学塞栓療法の有効性

No.4741 (2015年03月07日発行) P.52

楊 孝治 (近江八幡市立総合医療センター消化器内科部長)

登録日: 2015-03-07

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

肝細胞癌治療におけるバルーン閉塞下肝動脈化学塞栓療法(balloon-occluded transarterial chemoembolization:B-TACE)の有効性について,近江八幡市立総合医療センター・楊 孝治先生のご教示をお願いします。
【質問者】
盛田篤広:京都第二赤十字病院消化器内科副部長

【A】

B-TACEはマイクロカテーテルを用いて施行する一般的なTACEの局所制御効果をさらに向上させることを目的として開発された手法です。これは単なる肝動脈閉塞下の塞栓術ではなく,バルーン閉塞下に発生する血行動態の変化を利用することで,腫瘍へのより効果的な薬剤の集積を得て局所制御を高める治療法です。
肝細胞の動脈・門脈による二重血管支配はTA CEを安全に施行できる根拠となっています。これに加えて,第三の血液供給路と言える胆道周囲の血管叢(peribiliary vascular plexus)が存在します。この血管叢は肝動脈との間に多くの吻合を有しており,肝動脈が閉塞したときの側副血行路として機能します。また,この血管叢以外にも肝動脈間には様々な側副血行路が存在します。そのため,マイクロバルーンで肝動脈を閉塞させると末梢側の動脈圧は低下しますが,動脈血流は完全には遮断されません。
一般的なTACEでは,薬剤は動脈圧で押し込まれるため,腫瘍に加え門脈系に流入してしまいますが,マイクロバルーンで閉塞させると動脈圧が低下し圧勾配が変化するため,薬剤は門脈へ流入せずに,血管抵抗の少ない腫瘍内へ優先的に流入し,腫瘍への薬剤集積が向上すると考えられています。また,一般的なTACEと比べ,B-TACEの場合は門脈圧のかかっている正常肝組織への薬剤流入が減少するため,肝機能に対する影響が少なくなると報告されています。
さらにB-TACEは,腫瘍血管のすべてを個々に選択する必要性がなく,やや手前の領域から複数の腫瘍血管を一度に治療できるため,超選択的TACEに近い効果が得られるとされています。

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