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肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療法

No.4742 (2015年03月14日発行) P.49

藤井秀樹 (愛生会山科病院臨床検査部部長)

登録日: 2015-03-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

肝硬変に伴う難治性腹水に対する治療法について,愛生会山科病院・藤井秀樹先生のご教示をお願いします。
【質問者】
楊 孝治:近江八幡市立総合医療センター消化器内科部長

【A】

飲水・食塩制限などの生活指導,アミノ酸製剤投与などの栄養療法や利尿薬の投薬にもかかわらず,ADL低下をきたす中等量以上の難治性腹水貯留は肝硬変末期にしばしば経験します。特発性細菌性腹膜炎(spontaneous bacterial peritonitis:SBP)などの鑑別診断をした上で,難治性腹水と診断した場合,アルブミン静注(+フロセミド静注),腹水穿刺排液を繰り返します。
施設や経験などにも左右されますが,(1)腹水濃縮濾過再静注法,(2)腹膜頸静脈シャント術(portosystemic venous shunt:PVS),(3)経頸静脈肝内門脈大循環シャント術(transjugular intrahepatic portosystemic shunt:TIPS),なども可能であれば併用・選択します。
(1)腹水濃縮濾過再静注法は,腹水穿刺の手技ができれば施行可能で,アルブミン静注法と同等の効果が期待できると言われています。しかし,腹水中のエンドトキシン由来の発熱などから,施行できないことがあります。
(2)PVSは逆流防止弁を用いて腹水を頸静脈に注入する方法です。ある程度長期的なコントロールが期待されますが,心不全,DICなど致命的な合併症があり,特に術直後は注意が必要です。
(3)TIPSは門脈圧低下も併せて期待でき,効果が高いとの報告も多いのですが,保険適用の問題や,肝性脳症の増悪など合併症もあることから,慎重な評価が必要です。
(4)最近,内服薬でトルバプタンが利用できるようになり,選択肢が1つ増えました。長期投与の問題もありますが,低ナトリウム血症を伴う難治性腹水症例で,アルブミン静注を繰り返す前に投薬を試みています。

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