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膵神経内分泌腫瘍の薬物療法の治療方針【内分泌症状の緩和にはソマトスタチンアナログやeverolimusが期待される】

No.4796 (2016年03月26日発行) P.51

五十嵐久人 (五十嵐内科副院長/下関市立市民病院内科)

登録日: 2016-03-26

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

切除困難な膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:PNET)の薬物療法として,everolimus,sunitinib,streptozocinなどの新規薬剤が登場し,さらにlanreotideも承認見込みと聞きます。これらの薬剤をどのように使っていけばよいでしょうか。PNETのG1,G2に対する薬物療法の治療方針について,五十嵐内科,下関市立市民病院・五十嵐久人先生のご教示をお願いします。
【質問者】
池田公史:国立がん研究センター東病院肝胆膵内科科長

【A】

PNETはわが国では増加傾向であり,WHO分類にて高分化のNET(NET G1/G2)と低分化のNECに分類されます。切除困難なPNE
T,NET G1/G2に対して,これまでわが国では承認された有効な薬剤がありませんでした。最近行われた国際共同治験(global試験)の結果により,分子標的薬であるeverolimusやsunitinibがわが国でもPNETに対し承認されました。これら2つの薬剤は進行性PNETに対するglobal試験で,同等な無増悪生存期間延長効果を示しました。一方,奏効割合は10%以下で腫瘍の安定化や進展抑制に寄与すると考えられています。
両薬剤の使いわけについて,現時点で確立されたものはありませんが,患者のprofileに応じた使いわけが提案されています。NETはホルモン過剰分泌による内分泌症状を呈する機能性腫瘍と,内分泌症状を呈さない非機能性腫瘍に大別されますが,everolimusは機能性腫瘍による内分泌症状の緩和効果が知られています。また,everolimusはもともと免疫抑制薬であるため易感染性の副作用があり,ほかに間質性肺炎や高血糖をきたすことがあります。そのため,肺疾患やコントロール不良の糖尿病を有する症例に対して,sunitinibを使用するという考え方があります。逆にsunitinibには高血圧,心機能低下,QT延長症候群,甲状腺機能低下,手足症候群などが副作用としてみられることがあり,心疾患を持つ症例にはeverolimusを使用するという考え方もあります。しかし,これらは絶対的な薬剤選択基準ではありません。
日本人に対する臨床試験の結果をみると,欧米人と比較しeverolimusにはさらなる無増悪生存期間延長効果が,sunitinibには高い奏効割合が期待されています。しかし,これらは比較試験による検証が必要です。
今まで海外で承認され日本では未承認であった,アルキル化薬系殺細胞性抗腫瘍薬であるstreptozocinが2014年に承認されました。従来の臨床試験結果では,streptozocinベースの化学療法の高い奏効割合が示されました。腫瘍ボリュームが大きい症例や,腫瘍増殖の速い症例に有効と考えられていますが,日本人における長期効果のエビデンスが不足しています。
ソマトスタチンアナログであるoctreotide,octreotide LAR(徐放剤)は内分泌症状緩和目的に使用されてきました。最近,lanreotide autogelの膵消化管NETに対する無増悪生存期間延長効果が,global試験によって示されました。現在国内での承認をめざし,多施設共同第2相試験が行われています。
内分泌症状の緩和にはソマトスタチンアナログやeverolimusが,腫瘍安定をめざす場合は,分子標的薬(特にeverolimus)や承認後のlanreotideが,腫瘍増殖が速い症例や腫瘍ボリュームが大きい症例には,分子標的薬(特にsunitinib)やstreptozocinが期待されます。今後比較試験を行い,治療アルゴリズムを作成することが急務であると考えられます。

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