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ピンホールで結像する理由

No.4707 (2014年07月12日発行) P.67

小倉裕介 (大阪大学大学院情報科学研究科准教授)

登録日: 2014-07-12

最終更新日: 2016-12-12

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【Q】

眼もカメラもレンズを通さないと結像しないが,ピンホールではレンズがないのに結像するのはなぜか。 (東京都 N)

【A】

ピンホールは物体の各点から出射した光線のうち,特定の角度で伝搬する光線のみを限定的に通過させる。その結果,物体面と像面に1対1かつ相似の写像関係が成立し,物体の像が得られる。以下に詳しく述べる。
結像とは,光学系を用いて物体の像が生成される現象である。まずはレンズによる結像について考える(図1a)。
照明された物体の各点からは,様々な方向に進行する光線が出射する。
(1)レンズによる結像
レンズは,これらの光線をある面(像面)で再び一点に集める役割を担っている。この機能により,物体の各点における光強度や色などの情報が像面に写像され,条件によって拡大・等倍・縮小された物体の像が得られる。
このように,結像するためには,物体面と像面における光情報の分布が相似で,各点が1対1に対応していることが必要である。なお,像面の位置は,レンズの焦点距離と,物体からレンズまでの距離によって決まる。観察する位置を像面から前後に移動させると,物体上の各点からの光線が一点に集まらなくなり結像しない(ボケた像になる)。
(2)ピンホールによる結像
次に,図1bのように,レンズの代わりにピンホールを置いた状況を考える。
物体から出射した光線のうち,ピンホールの位置以外に到達する光線は遮られるため,ピンホールを通過する光線はきわめて限定される。ピンホールが十分に小さければ,通過するのは,物体の各点からピンホールを結ぶ方向の光線のみと考えてよい。この場合,レンズによる結像と同様に,物体面と像面の各点が1対1に対応し(別々の物体点からの光線は像面でも別々の位置に到達する),物体の像が得られる。
ピンホールの系では,観察する位置を前後に移動させても1対1の対応関係は維持されるため,倍率は変化するが,どの面でも像を観察することができる。なお,ピンホールが無限小でないこと,あるいは,回折現象(波動が遮蔽物の裏側に回り込んで伝搬する現象)により,実際には,上記の光線モデルで予想されるよりも像は劣化する。
このように,レンズは光線を集めて結像するのに対して,ピンホールは光線を削減することによって結像する。したがって,レンズでは明るい像が得やすいが,ピンホールは暗い像しか得られない。
ピンホールによる結像の効果は,手軽に確認できる。両手の親指と人差し指を使ってきわめて小さな穴をつくり,そこから覗いてみていただきたい。穴を小さくしていくと,だんだん暗くなるが,物がハッキリ見えてくる。特に目が悪い人は肉眼で試すとよくわかる。

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