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誤診し続け1年半 [プラタナス]

No.4772 (2015年10月10日発行) P.1

西垂水和隆 (今村病院分院救急・総合内科主任部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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  • 誤診したケースはだいたい家に帰るときに思い出す。診療が終わって退室していただくときにも何となく引っ掛かる感じがあるのだが、後から思い出す症例の場合はだいたい翌日かその日の夜に再診していて、やっぱりなーと思う。この虫の知らせを感じながらも、また帰してしまうという愚かな行為を繰り返している。しかし、本例は何の疑いも持たず1年半も外来で誤診したまま、誤った治療を、しかも結構上手に行ったのである。

    患者は80歳代の男性で、微熱と両側大腿部痛が主訴であった。血沈130mm/h以上。各種培養陰性でCTでも特に異常なし。当初、リウマチ性多発筋痛症としてプレドニゾロン15mg/日で治療を開始し、かなり効果が見られたが再燃したため、ステロイドを中止して入院。Gaシンチで股関節近傍に取り込みあり。しかし、MRIや整形コンサルトするも特に異常なし。心雑音があったため経食道エコーまで行ったが異常なく、側頭動脈生検では血管炎が否定できないとのことであった。各種検査で悪性疾患も否定的であり、側頭動脈炎としてプレドニゾロン50mg/日を開始、速やかに解熱して痛みも消失した。

    その後、私が外来で1年半担当した。ステロイドを減量していくと、いつも10mg/日くらいで発熱と大腿部痛が再出現するため、再度増量してはゆっくり減らしたり、隔日投与にしたり、間欠的に点滴で治療したりした。さらに、糖尿病の治療も高齢ながらインスリンを使って結構苦労しながら行い、入院することもなく経過した。私がその病院を離れるときも家族一同非常に残念がってくれた。

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