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裏側に隠されたもの…… [プラタナス]

No.4776 (2015年11月07日発行) P.3

朝倉健太郎 (大福診療所所長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-09

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  • 健康問題の多くはライフスタイルやその人の置かれている状況、環境、家族、価値観など様々な因子と関わりがある。また、主訴や訴えは決して生物医学的視点だけで解決できるものではない。解釈モデルの理解、心理社会的アプローチ、関係性の構築が時に重要な意味を持つことがある。

    聾唖の60歳代男性もその一人であった。文字の教育を十分に受けるチャンスがなかったためか、筆談もままならない彼にとって、医療機関の受診は大問題であった。同じく聴覚障害を持つ妻と二人暮らしをしているのだが、日常の苦労、そして消えることのない不安感は並大抵なものではないだろう。初診から数回は、1回の診療に30分近く要することも少なくなかった。お互い行ったり来たりのコミュニケーションに耐えなければならなかった。

    これまで複数の医療機関を転々としたというが、それも理解できなくはない。そして、血圧は普段から200mmHg近く(写真)、慢性腎臓病、糖尿病、腰痛、肩こり、下肢の痛み、しびれ……訴えも少なくはなかった。しかし、屈託ない満面の笑顔で訪れる彼と、どことなく気品漂う妻、そして受診のたびに市の障害福祉課から派遣されるユーモア溢れる手話通訳士との診察時間は密かな楽しみになっていった。回を重ねる毎に込み入った背景を徐々に理解することができたように思う。

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