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加齢による歯と血管の変化

No.4754 (2015年06月06日発行) P.61

松下健二 (国立長寿医療研究センター口腔疾患研究部部長)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

(1)加齢のためか,歯の黄ばみ(茶色)が目立つようになり,磨いても一向に除去できません。これは何が沈着しているのですか。(2) 歯の間隔が目立ってきた場合,Caを多く摂取すれば目立たなくなるのでしょうか。(3) 手背の血管が目立って,皮下出血しやすくなる原因をご教示下さい。 (石川県 S)

【A】

(1)歯の黄ばみ
歯の黄ばみの原因には,内因性と外因性のものがありますが,ご質問での原因は内因性の要因の1つである加齢によるものと考えられます。質問文から,質問者は口腔の健康に対する意識が高く,歯磨きなどの口腔清掃をまめに実行している印象を受けます。歯磨きが十分でない場合は,食べ物(みかん,お茶など)やたばこのヤニなどの着色も考えられますが,その可能性は低いように思われます。
具体的に加齢による歯の黄ばみは,長期にわたる歯の咬耗や不適切な歯磨きなどによる摩耗により,歯の最表層のエナメル質が薄くなり,その結果,その下の象牙質が透けて見えるようになるために起こります。黄ばみは,その象牙質の色です。したがって,歯磨きでは解消されません。すり減ってしまったエナメル質を元に戻す方法は今のところありません。
(2)歯の間隔
歯の間隔が目立ってくるのは,加齢による場合と歯周病による場合があります。原因としては,歯を支えている歯槽骨の水平的な吸収によるものです。現在の治療法では,水平的に減ってしまった骨を元に戻すことはきわめて難しいと言えます。Caの摂取に効果はありません。ただ,歯周病治療により進行を抑えられる可能性があるので,一度近医を受診の上,精査することをお勧めします。
(3)手背の血管
加齢とともに手背の血管が浮き出て見えるようになるのは,皮下組織(真皮)の厚さが減少し,膠原線維や弾性線維が萎縮するためだと考えられます。その結果,皮膚の弾力がなくなってくるため,わずかな打撲でも出血しやすくなります。このときできる斑状の内出血を老人性紫斑と言います。加齢によるところが大きいと考えられますが,頻繁にみられる場合は血液疾患や肝疾患なども疑われるので,一度最寄りの医療機関を受診することをお勧めします。

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