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忘れられない症例─研修医時代の入院病歴総括から [プラタナス]

No.4795 (2016年03月19日発行) P.3

今田恒夫 (山形大学医学部内科学第一 (循環・呼吸・腎臓内科学)講座准教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 研修医時代に担当した症例の入院病歴総括を手元に持っている。その中に、今でも後悔の念とともに読む1枚がある。

    70歳代、男性、小さな町工場の社長Aさん。ネフローゼ症候群で入院し、腎生検で膜性腎症と診断後、副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬による治療を始めた。2週間ほど経った頃、Aさんから「先生、お盆だし、ちょっと外泊したいんだけど」と言われ、私は「まだお薬の量も多いし、感染を起こすと怖いから、今回はちょっと無理だなあ」と返事をした。Aさんから「本当は工場にいろいろあって、私が行かないとだめなんだ」と繰り返しお願いされ、根負けした私は「それじゃ、マスクして事務所の中で書類仕事のみ、人の集まるところには行かない、という約束であればいいですよ」と数日の外泊を許可した。ところが、Aさんは外泊からは元気に戻ったものの、その夜から39度台の熱を出した。胸部X線写真では両肺に浸潤影が出ており、抗菌薬と免疫グロブリン投与により一時解熱したが、数日後に再び高熱となり、以降、各種抗菌薬を使用するも効果なく、呼吸不全、敗血症、DICとなり、約1カ月後に死亡した。

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