私が後期研修を終え、とある病院で勤務していたときのこと。肺炎で入院となった患者さんがいた。精査により、ニューモシスチス肺炎によるエイズ発症と診断。その方は独身の50歳代の男性同性愛者(ゲイ男性)。ご本人はこれまでにHIV検査をされたことはなく、病名を告知した際に大きなショックを受けられたが、できる限りの治療を希望された。その患者さんに、入院当初よくお見舞いに来ていた初老の男性がいた。入院後しばらくして両親が面会に来るようになり、患者さんからは両親を含む家族に病名を伝えないように、と強い希望があった。
ところがしばらくして、ご両親から家族以外の友人を面会させないでほしいとの希望があった。呼吸状態の悪い本人にその件を伝えたところ、酸素マスクの下で、やむをえない、と仰ったので、面会にいらしていた男性にその件をお伝えしたところ、一瞬寂しそうな表情を浮かべたが、その後二度と病院にみえることはなかった。
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