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忘れえぬ心電図─心電図にも顔がある[プラタナス]

No.4805 (2016年05月28日発行) P.1

小田倉弘典 (土橋内科医院院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2016-11-28

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  • 10余年前、総合病院の循環器内科医から、開業してプライマリケアの現場に飛び込んだ。最初に感じたのは、患者さんとの意思決定の難しさ。病院の専門外来ではあらかじめ心臓病であることを知らされており、治療方針の多くはすんなり決まるという印象があった。ところが、診療所では慢性疾患を抱えてはいるものの実際は元気で、予防・健康増進目的に通院する人が多い。

    63歳、Aさんもその一人。高血圧と糖尿病で数年通院され、ある日外来で脈をとったら不整があり、心電図で心房細動がみられた。でも、まったく症状はなし。「Aさん、脈の乱れがありますね。心房細動と言って脈が不規則で早くなる病気です。放っておくと心臓の中に血の塊ができて、脳梗塞の危険もあります」。専門外来なら、こうした説明で服薬の合意が比較的にスムーズにとれるが、Aさんは自分の心房細動を認めようとしなかった。「全然症状がないのに病気というのはおかしい」、「脈をとっても乱れていないしドキドキもしない」、「薬なんか飲まない」。

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