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肺葉内に限局した先天性嚢胞性腺腫様奇形への肺区域切除術の適応

No.4734 (2015年01月17日発行) P.61

広部誠一 (東京都立小児総合医療センター外科部長・副院長)

登録日: 2015-01-17

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

先天性嚢胞性腺腫様奇形(congenital cystic adenomatoid malformation:CCAM)は,病因・分類について議論の多いところですが,その手術治療について。
CCAM病変は悪性腫瘍の発生母地の可能性があることから完全切除が必要であり,CCAMが所属する肺葉切除が標準的であるとされています。CCAM病変が1肺葉を占拠し,生後間もなく呼吸困難などを呈する症例においては,肺葉切除術を行うことに異論はないと思われます。しかし,CCAM病変が肺葉内に限局し待機的手術の適応となる症例に対し,肺区域切除術を施行している報告も見受けられます。
近年,成人の分野では,肺癌の一部において,呼吸機能温存のための肺区域切除術が適応されていることを考慮しますと,病変の取り残しという問題が生じる可能性はあるものの,肺葉内に限局しているCCAMにおいては,肺区域切除術も選択肢の1つとしてよいのではないかとも考えられます。
肺葉内に限局しているCCAMに対する肺区域切除術の適応について,東京都立小児総合医療センター・広部誠一先生のお考えを。
【質問者】
天江新太郎:宮城県立こども病院外科科長

【A】

肺葉切除が基本です。肺切除後,残存肺が代償性に拡張しますが,肺胞が増加する場合と過膨脹する場合が考えられます。正常発育では,3歳頃まで急速に肺胞の数が細胞分裂して増えていくことが知られており,機能的発育のためには1歳までに手術することが望まれます。当院で検討した術後肺機能の変化では,1葉の肺葉切除では正常値を示しましたが,2葉切除では肺機能の低下を認めました。
区域切除は葉切除に比較して術後の合併症が多いこと,残存肺葉の代償性発育が期待できることから,一般的に区域切除の適応は限られます。病変が2葉に及ぶ症例は10%程度に認め,その場合には術後肺機能を配慮して区域切除を組み合わせています。

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