当時の最新のウイルス肝炎研究についてまとめられた書。吉澤氏は金沢大学卒業後、東京都臨床医学総合研究所を経て広島大学名誉教授(吉澤浩司著、中外医学社、1984年刊)
私は、C型肝炎ウイルスが世界で初めてクローニングされたほぼ同じ時期から、特にウイルス肝炎の疫学研究を開始した。数学科出身であるが、縁あって社会医学(衛生学)分野で研究職を得て、今でいうビッグデータ解析のひとつである国保レセプトの解析や、1万人規模の労働者を対象とした疫学研究などで論文博士となった頃、肝炎ウイルスに出会った。つまり1990年、広島大学衛生学教室に新たな教授として赴任されたのは、肝炎ウイルスという壮大な研究テーマを持つ吉澤浩司先生であった。赴任後、数日目から著書『ウイルス肝炎』をもとにした1対1の講義が始まった。
この本は、当時のウイルス肝炎研究に携わっていたAuグループをはじめとする多くの研究者が得た知見、当時わかりうる最新研究と成果、その過程についてまとめたものである。A型、B型肝炎ウイルスだけではなく、当時、非A非B型肝炎ウイルスといわれていたC型肝炎ウイルスの存在と性質、感染病態などについて、多くの論文の引用や電顕写真とともに詳細にまとめられている。
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