先天性食道閉鎖症は,胎生期の気管,食道の分岐過程で発生する形態異常の1つである。上部食道が盲端で下部食道気管瘻があるGross C型が最も頻度が高く,開胸もしくは胸膜外アプローチによる気管食道瘻切離,食道端々吻合術が行われてきた。手術は生後0日か1日に行われることが多かったが,新生児期に肋間を大きく開ける開胸操作は侵襲も大きく,術後の胸郭変形など整容性も良くなかった。近年,小児領域でも胸腔鏡や腹腔鏡を使用した内視鏡手術が導入され,食道閉鎖症に対しても2000年に初めて胸腔鏡下一期的根治術が報告され(文献1),わが国では2005年の報告(文献2)が最初である。手術はスコープ用5mmトロッカー1本と鉗子用3mmトロッカー2本の3ポートで行う。
次に頻度の多いGross A型は,上部・下部食道ともに気管瘻がなく,食道盲端同士の距離が長い,いわゆるlong gapの場合が多い。一期的吻合は困難であるため様々な方法が考案されてきたが,どの手術も侵襲が大きく,新生児・乳児には大きな負担であった。従前よりFoker法という上下食道盲端にかけた牽引糸を体外に引き出して食道を延長した後,食道端々吻合術を施行する術式があったが,最近では胸腔鏡下で行われるようになった。
胸腔鏡下手術は肋間を広く開けるという大きな侵襲がないため,術直後の呼吸機能の回復も早く,晩期合併症としての肋骨の癒合や胸郭変形が生じない。体重2~3kg前後の新生児の胸腔内という狭い操作空間の中で,3mmの鉗子よりも細い消化管の吻合を行うという高度な技術を要するが,低侵襲手術として有用である。
1) Rothenberg SS:Pediatr Endosurg Innovat Techn. 2000;4(4):289-94.
2) 奥山宏臣, 他:日小外会誌. 2005;41(1):23-7.