家庭血圧を用いた高血圧診療は揺るぎないものになっている。しかし,測定方法を患者本人にゆだねる以上,測定回数などの指針は必要である。JSH 2009では,家庭血圧測定は,1機会1回以上(1~3回)と記載されており,1機会に複数回の測定を勧めているにもかかわらず,高血圧診療に用いる際には,原則として1機会1回目の平均の血圧値を用いるという,混乱する記載がなされていた。
その後,臨床現場からの統一した測定回数を規定してほしいという要望や,実際には1回で測定を終了してしまう患者のほうが少ないといった理由,また,ESH/ESCガイドライン 2013においても1機会に2回測定し,その平均値を用いると記載されていることから,JSH 2014では“1機会原則2回測定し,その平均をとる”と記載され,“1機会に1回のみ測定した場合には,1回のみの血圧値をその機会の血圧値として用いる”という記載とした。
海外の家庭血圧と心血管予後の関係をみたコホート研究であるFinn-Home研究においては,1回目と2回目の家庭血圧値はどちらも,心血管イベントの予測能としては統計学的に有意ではあるが,血圧以外のリスクファクターと心血管イベントとの関連性のモデルを統計学的に改善するには,1回目の収縮期血圧値は関係なく,2回目の収縮期血圧値のみが,その関連性を強くしたことが報告されている(文献1)。
1) Niiranen TJ, et al:Hypertension. 2011;57(6): 1081-6.