肝細胞癌治療においては,ウイルス性肝炎を背景にした発がんが多いため,ウイルスのコントロールによって予後の改善が得られるものと期待される。しかし,『肝癌診療ガイドライン』においては術後に有効と報告されている補助療法はあるが,推奨するまでには至っていない。
台湾の膨大な国民健康保険データベースを使用した肝切除後のコホート研究では,核酸アナログを使用した518例に対して無治療4051例の長期予後が報告された(文献1)。核酸アナログの使用によるハザード比は0.67(95%CI;0.53~0.87,P= 0.002),肝硬変を認めない患者群のハザード比が0.56(95%CI;0.42~0.76)であった。また,肝切除後の核酸アナログによる再発抑制効果がRCTによって検証された。このRCTでは,核酸アナログとしてラミブジンが使用され,変異耐性化が認められた場合にはアデホビル,エンテカビルを追加・変更し,セロコンバージョンするまで使用された。
795例のコホート研究と180例のRCT研究が同時並行で検証された結果,RCTで再発率や肝細胞癌関連死におけるハザード比が0.48(95%CI;0.32~0.70)および0.26(95%CI;0.14~0.50)であった(文献2)。再発抑制効果に関しては科学的エビデンスを提供した。今後はセロコンバージョン後の再発抑制に対しても,個別化治療へ向けた探索に期待が寄せられる。
1) Wu CY, et al:JAMA. 2012;308(18):1906-14.
2) Yin J, et al:J Clin Oncol. 2013;31(29):3647-55.