MRIの肝特異的造影剤EOB・プリモビストR(ガドキセト酸ナトリウム)は,従来の肝細胞癌の画像診断でのgold standardであったダイナミックスタディ(血流診断)に加え,肝細胞のトランスポーターの発現活性を介した,造影剤の取り込み機能を評価する肝細胞相の撮影が可能である。EOB-MRIの肝細胞相では血流診断ではとらえられない低信号を呈する乏血性結節が認識でき,病理学的にその多くは早期肝細胞癌と報告されている(文献1)。
EOB-MRIの肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節がより悪性度の高い多血性肝癌へと進行(多血化)するリスクは,大きい結節(≧15mm)で年率50%程度と高率であるが,小さい結節(≦7mm)では年率1~5%程度と低い。結節の多血化には,結節径以外にも増大や脂肪化などの因子との関連が指摘されている(文献2)。また,細胞相で低信号を呈する乏血性結節の存在は結節自体が多血化していくリスクのみならず,肝内の別の場所に新たな多血性肝癌が出現するリスクにもつながり,肝臓全体の発癌ポテンシャルが高いことを意味している。
さらに肝細胞癌の既往のない患者に限ると,肝細胞相で低信号を呈する乏血性結節がまったくない肝臓(クリーンリバー)からは1年以内に多血性肝癌の出現がなく,画像サーベイランス期間を延長できる可能性も示唆されている(文献3)。EOB-MRIの有用性に関するエビデンスはここ数年で多数報告されており,今後の展開が期待されている。
1) Sano K, et al:Radiology. 2011;261(3):834-44.
2) Motosugi U, et al:J Magn Reson Imaging. 2011; 34(1):88-94.
3) Komatsu N, et al:Hepatol Res. 2014 Feb 14. [Epub ahead of print]