乳癌の予後を推定するために,最近ではいくつかのDNAを組み合わせた多遺伝子アッセイ系が開発されている。このアッセイ系統開発は,予後の判明している前向き無作為化試験の症例検体をDNAチップで解析し,予後に関連する遺伝子を抽出して,その重み付けをした組み合わせで予測式を導き,その計算結果から予後を推定するといった手順である。米国で代表的な多遺伝子アッセイで,わが国でも商業ベースで利用できるものとしてOncotype DXRがある。これはエストロゲン受容体などのホルモン受容体関連,増殖因子関連,転移関連などの16個のがん関連遺伝子と,5個のhouse keeping geneとを組み合わせて再発スコアを計算するものである。再発スコアの数値により再発リスクを高・中・低の3段階にわけ,低ではホルモン療法のみ,高では化学療法併用が勧められ,中では現在臨床試験が進められている。
もともとの前向き無作為化試験の関係からホルモン受容体陽性,リンパ節転移陰性乳癌症例を対象としているが,最近ではリンパ節転移陽性でも使用でき,非浸潤性乳管癌用のアッセイも開発されている。欧州ではPAM50という50個の遺伝子を利用したアッセイ系が開発されており,これもFDAで認可され,商業ベースで使用できるようになっている。
わが国ではCurebestTM 95 GC Breastというアッセイ系が開発されている。このアッセイ系もホルモン受容体陽性,リンパ節転移陰性の乳癌に適応され,再発リスク高・低に選別できるとされる。これらのアッセイは現在まだ保険適用されていないが,化学療法を回避する手段としての利用価値が理解されれば,保険適用もなされるようになると期待される。