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Capicua遺伝子(CIC)による7大主要がんの早期発見方法の開発[学術論文]

No.5221 (2024年05月18日発行) P.30

岡﨑 勲 (東日本国際大学客員教授)

安藤 航 (北里大学薬学部臨床薬学大講座(薬物治療学Ⅳ)助教)

曽我部将哉 (自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器外科助教)

古屋博行 (東海大学医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学教授)

登録日: 2024-05-20

最終更新日: 2024-05-17

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    がん抑制遺伝子Capicuaの喪失は7大主要がんの早期にMMP-1を発現する。

    筆者らの乳がん/肺がん検診は尿exosomes中のmicroRNAとMMP-1活性を測定する。

    症例が少ないが乳がん/肺がん検診の感度95%/89%・特異度78%/88%。

    1. はじめに

    Capicua遺伝子(CIC)は7つの主要ながん,肺がん,乳がん,胃がん,肝がん,膵臓がん,大腸がん,前立腺がんとどう関連があるのか。従来,がん遺伝子研究は,肺がんのがん遺伝子,乳がんのがん遺伝子というように臓器ごとに研究されてきた。ところが,これら7つの主要ながんの発生機序に共通しているのがCICの喪失による発がん過程であることが明らかになった。

    筆者らが最初にCICを知ったのは,CICというがん抑制遺伝子の喪失による肝がん発生の論文である1)。筆者は米国肝臓学会誌Hepatologyからこの論文の査読を2017年に依頼され,初めてCICを知った。では,なぜ査読依頼がきたのか。

    CIC遺伝子喪失の過程でコラゲナーゼ(matrix metalloproteinase-1:MMP-1)が発現してくる。筆者は肝臓のコラゲナーゼが肝硬変の改善に必須と考え,1974年にNatureで,ラット肝での線維化過程で肝臓のコラゲナーゼ酵素が高活性で存在し,肝硬変で低下することを報告した2)。肝癌の進行におけるMMP-1遺伝子発現と蛋白レベルをin situ hybridizationおよび免疫組織化学法を駆使して解析し,肝がん早期の段階で間質浸潤により共存する肝硬変の厚い線維化を肝がん細胞がMMP-1で破壊し,菲薄な線維化とした所見をHepatologyに報告した3)。その後もMMP-1研究を発表し4)~7),2001年に東京で肝線維化に関与する遺伝子の国際シンポジウム「肝硬変治療の新戦略」を開催8)するなど,約50年にわたりMMP-1の研究を続けてきたことによると考えている。    

    査読依頼を受けた頃,筆者らは,尿exosomes(後述)中に遺伝子が排泄されることから,その遺伝子研究からがん検診への応用の可能性を研究していた。CICが肝がんの発現と関係することは明白なので,乳がんと肺がんで症例対照研究を行った。乳がんは,わが国で女性のがん罹患率第1位で,女性のがん死亡率第4位である。肺がんは男女合わせて罹患率第4位,死亡率は男女合わせて第1位(2021年)で,筆者らは尿exosomesをがんスクリーニングのtargetにした世界初の乳がん検診方法9)に続いて肺がん検診方法10)を発表し,それぞれ特許も取得した11)12)

    本稿では,感度・特異度もよく,7つのがん検診を目標に共通した2~3のバイオマーカーを測定し,個人情報を入力してAIで鑑別していく地域・職域がん検診の可能性を提案したい。

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