著者は、1991年自治医大卒業後、28歳で福井県名田庄診療所に赴任。地域医療を担う総合医として成長してゆく20年にわたる軌跡が綴られている。
(中村伸一著、メディアファクトリー、2011年刊)
筆者は脳神経外科学と救急医学とを学び、現在は後者に軸足を置いている。そして縁あって日本専門医機構に参加し、肩書き右下委員会で議論のさなかにある。
かつて「救急診療などは救急病院で度胸を据えればよい」と揶揄されたその昔と同様、恐らく自治医大の卒業生らも「地域に出ればそれが総合診療だ」とされてきたかもしれない。本書を著した中村医師も「専門は?」に「名田庄です」と答えている。この「働く場所が専門」という言い回しについて、遡れば救命救急センターの黎明期、外傷学に夢中だったあの頃に、筆者も「専門は?」に「〇〇救命救急センター」と返事をして、なお「で、専門は?」に「脳外です」で落ち着いた当時を思い出す。救命救急は集中治療を旨とする総合診療であったからとも思われる。
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