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乳癌に対するホルモン療法の変化

No.4757 (2015年06月27日発行) P.52

池田 正 (北里大学北里研究所病院ブレストセンター長)

登録日: 2015-06-27

最終更新日: 2016-10-26

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術後ホルモン療法としては外科的治療を除くと,1990年頃までは選択的エストロゲン受容体調節薬タモキシフェン(TAM)のみであった。その後,わが国においては閉経前症例に対するLH-RH agonist,閉経後症例に対するアロマターゼ阻害薬(AI),選択的エストロゲン受容体崩壊薬フルベストラントなどが承認されてきた。
閉経後乳癌に対するホルモン療法においては,TAMの5年間投与が標準的治療とされてきた。しかし,TAMよりもAIのほうが有効であることが証明され,術後ホルモン療法の設定においては術後早期からAIを使用する,あるいはTAMを2~3年使用後にAIを使用する,あるいはTAMを5年使用後にAIを使用する,すなわち,術後のいずれかの時期にAIを使用することが標準となった。また,TAMの投与期間にしても,今までは5年間投与が標準であったが,前向き無作為化比較試験の結果,10年間投与のほうが晩期再発が少なくなることが明らかにされ,高リスク患者では徐々に10年間投与が多くなってきている。投与期間が長くなるとそれだけ副作用も多くなるため,子宮体癌,血栓症などへの注意も必要になる。
一方,Luminal Aの閉経後再発乳癌に対しては,アロマターゼ阻害薬エキセメスタン(アロマシンR)とm-TOR阻害薬エベロリムス(アフィニトールR)との併用が,エキセメスタン単独に比べて有意に無増悪生存期間を延長したことを受けて,エベロリムスの適応が乳癌にも拡大された。
ホルモン依存性のメカニズムが解明されるにつれ,増殖因子による細胞増殖シグナルとのクロストークが明らかになり,今後もホルモン療法と分子標的治療薬との併用を探る試みが続くであろう。

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