1997年にゲムシタビン(GEM)がフルオロウラシル(5-FU)との比較試験で,生存期間の有意な延長および症状緩和効果を示して以降,GEMが切除不能膵癌の標準治療薬として用いられてきた(文献1)。2008年にS-1が遠隔転移陽性例を対象に生存期間中央値(MST)9.2カ月と良好な結果を示し,S-
1およびGEM+S-1併用療法(GS療法)の有用性を検証したGEST試験(文献2)ではS-1のGEMに対する非劣性が示されたが,GS療法のGEMに対する優越性は認められず,S-1単剤治療が標準治療に加わった。
上皮成長因子受容体阻害薬エルロチニブがGEMの併用薬として初めてGEM単剤を全生存期間(OS)において有意に上回り,遠隔転移陽性例においてMST 11.1カ月を示したFOLFIRINOX(オキサリプラチン+イリノテカン塩酸塩+5-FU+レボホリナートカルシウム併用療法),8.5カ月を示したGEM+ナブパクリタキセル併用療法が,それぞれ2011年,2013年,2014年に使用可能となった。二次治療については支持療法に比し有意な予後延長効果を認め,GEST試験でも二次治療による生存期間延長効果が推察されており,一次治療に応じた薬剤選択が推奨される。
切除不能膵癌に対する化学療法の選択肢は,ここ数年で増加するとともに,生存期間の延長も得られている。一方,これら新規レジメンでは有害事象の増強も認められており,全身状態や年齢,骨髄機能などから,適切な治療法の選択が重要である。
1) Burris HA 3rd, et al:J Clin Oncol. 1997;15(6):2403-13.
2) Ueno H, et al:J Clin Oncol. 2013;31(13):1640-8.