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進行膵癌に対する新規化学療法 【いかに有効な薬剤で安全に治療するかが課題】

No.4778 (2015年11月21日発行) P.46

中井陽介 (東京大学消化器内科)

小池和彦 (東京大学消化器内科教授)

登録日: 2015-11-21

最終更新日: 2016-10-26

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膵癌は年間3万人以上が罹患し,ほぼ同数の患者が死亡する予後不良な疾患である。特有の症状がなく,高危険群の設定ができておらず,切除不能の進行癌で診断されることが多い。
1996年,5-FUに対するゲムシタビン(GEM)の延命効果が示されて以来,標準治療として長く行われてきた。その後,臨床試験が多数行われたが予後延長は得られず,わが国で開発されたS-1もGEMと同等の成績は示されたが,GEMとの併用による予後延長は得られず,進行膵癌に対する化学療法は10年以上にわたる停滞期であった。
しかし,欧米からGEMを大きく上回るFOLFIRI
NOX(5-FU+LV+イリノテカン+オキサリプラチン),GEM+nab-PTX(ナブ・パクリタキセル)が相次いで報告(文献1,2)され,進行膵癌に対する化学療法の状況は一変した。GEMとの比較試験では,全生存期間がそれぞれ11.1 vs. 6.8カ月,8.5 vs. 6.7カ月と有意に延長を認め,わが国でも相次いで保険適用となった。一方,これまでのレジメンと異なり,骨髄抑制・末梢神経障害などの重篤な有害事象も少なくないため,適切な症例選択,有害事象に対するマネジメントが求められ,いかに有効な薬剤を使いきりながら安全に治療を行うかという,新しい課題も出てきている。また,高い抗腫瘍効果を伴うレジメンの出現もあり,術前化学療法という新しいコンセプトも出てくるなど,膵癌における化学療法は,停滞期から一転,今後ますます治療成績向上が期待される領域となっている。

【文献】


1) Conroy T, et al:N Engl J Med. 2011;364(19):1817-25.
2) Von Hoff DD, et al:N Engl J Med. 2013;369(18):1691-703.

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