著者J・D・ワトソン(1928〜)は米国の分子生物学者。1953年にDNAの二重らせん構造を発見し、1962年フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンスとともにノーベル医学・生理学賞を受賞(ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー 著、青木 薫 訳、講談社、2003年刊)
私はアメリカ留学中、高血圧の原因であるレニンとアルドステロンの測定に成功していたので、一歩進んで細胞レベルでの高血圧の原因を解明したいと考えていた。ワトソンとクリックがDNAの二重らせんを発表したのが1953年であるから、随分と年月が経っていたが、私が東京工業大学生命研究室で手を染めた昭和時代でも、DNA解析の手法は手作業であった。たとえば、サンプルを一昼夜かけて超遠心機で30万回転し、その後サンプルを電気泳動に流し、暗室で現像して、その後自分の目でDNAを数えなければならなかった。
現在ではヒトのDNAはほぼ解明されているが、その生物学的な意味づけについては完全に解明されているとは言えない。想像以上に複雑なメカニズムによって遺伝子情報はDNA─mRNA─蛋白質と、いわゆるセントラルドグマが成り立っている。さらに近年では、その反対にDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼのような蛋白質である逆転写酵素によりDNAを制御しているとも言われている。
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