認知症の症状は,「中核症状」(記憶障害,見当識障害,失認など)と「周辺症状」(徘徊,せん妄,幻覚など)とにわかれる。このうち後者の認知症の周辺症状に有用な薬として漢方薬の抑肝散が最近,広く使われるようになっている。
一方,中核症状については,血管性の認知症に釣藤散が有効との報告があった1)。また最近,生薬「陳皮」の成分のひとつであるノビレチン(ポリメトキシフラボノイドの1種)がアルツハイマー病の病態モデルにおいて,アミロイドβによる記憶障害を改善する作用を有し,アミロイドβの蓄積を抑制することが確認された2)。さらに認知症モデル動物にノビレチンを含む陳皮エキスとノビレチン単独を投与したところ,記憶障害改善作用は陳皮エキスのほうがノビレチンより強力であった3)。臨床では,ドネペジル単独と陳皮併用の比較をミニメンタルステート検査(MMSE)とADAS-J cog(Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive component-Japanese version)によって評価したところ,併用はADAS-J cogが有意に改善した3)。
上記の結果から陳皮の認知症への効果の一部がノビレチンによるものであることが示唆された。今後も,ほかの生薬でもさらなる認知症に対する効果が発見されることを期待したい。
【文献】
1) 寺澤捷年, 他:Pharm Med. 2007;25(9):57-9.
2) Onozuka H, et al:J Pharmacol Exp Ther. 2008; 326(3):739-44.
3) Seki T, et al:Geriatr Gerontol Int. 2013;13(1): 236-8.
【解説】
並木隆雄 千葉大学和漢診療学診療教授