国土強靭化や健康・医療戦略を担当する和泉洋人首相補佐官(写真)が15日、災害時の感染症対策がテーマのシンポジウム(主催:レジリエンス・ジャパン推進協議会)に登壇し、政府の『国土強靭化基本計画』(用語解説)に関して、「医療は災害に備えて事前投資すべき重要インフラ」と強調した。
和泉氏は近年の大規模災害を振り返り、「『忘れた頃』ではなく、忘れないうちに次々やってくる」とした上で、「世界的には薬剤耐性や新興感染症も脅威となっているが、それらを標的とした創薬への投資は起きにくい」と指摘。感染症を含む災害による被害を抑えるには「平時から社会のレジリエンス(強靭性)を高めるため、インフラへの事前投資が重要」とし、投資すべきインフラとして、道路、住宅とともに医療、消防、警察、通信などを挙げた。
巨大地震発生後の感染症発生を巡っては、東日本大震災などの事例から、環境衛生の悪化や避難所生活を要因とするインフルエンザや感染性胃腸炎の集団発生に加え、津波に襲われた地域では、致死率の高い破傷風やレジオネラ症なども増加することが分かってきている。
ただ、国土強靭化基本計画の中で「被災地における疫病・感染症等の大規模発生」は、災害時に起きてはならない「最悪の事態」とされているが、プログラムを重点的に推進して回避を目指す対象とはなっていない。
これについて和泉氏は、政府の「国土強靭化推進本部」が5月に決定したアクションプランを紹介。「災害時の予防接種やトイレ清掃、体液で汚染される可能性のある表面の消毒が『主要施策』に位置づけられている」とした。
用語解説▶国土強靭化基本計画
災害時でも経済社会システムが機能を維持できるよう、施策分野・プログラム別に推進方針を定めた政府の基本計画。2014年6月に閣議決定。保健医療・福祉分野の推進方針は「医療資源の適切な配分を通じた広域的な連携体制の構築」。