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気候変動 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.108

難波光義 (兵庫医科大学病院病院長)

登録日: 2017-01-04

最終更新日: 2016-12-26

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例年、秋口の長期予報でのやりとりに「この冬は暖冬」「いや、厳冬」という論議がある。当然のことながら春先には「この夏は猛暑だ」「いや、冷夏」と、気象予報士さんや環境学評論家の喧しいこと限りない。最近では、アメダス情報をスーパーコンピュータで演算すれば、1km四方どころか200m四方ごとの時間降水量まで予知可能です、と豪語しているくせに、この長期予報とやらは、あまり当たった試しがない。確かに、半年後の気温を予想することのほうが、30分後の200m四方のエリアの雨量を予測するよりも、はるかに難しそうなことであるのは、われわれ門外漢でも理解はできるが。

あまり当たらないのは、お天道様がお決めになることだから仕方がないのか?人知の予測が及ばないスピードで、この地球の温暖化が進行しているせいなのか? もしも後者だとすると、きわめて不気味なことである。

われわれが大学を出て医師の道を歩み始めた頃、確か「このままの勢いで温暖化が進めば、100年後には……」という解説を聞いたような記憶があるが、あれは一体どういう計算式に基づいた予測だったのだろうか? 先日、ある科学ルポで、「溶けだした永久凍土」というのをやっていた。シベリアやアラスカの永久凍土が溶け出しているらしい。凍土の中から気化してくるメタンは、二酸化炭素よりも強い断熱効果で、襟巻のようにこの地球を包みこむ。上昇した気温がさらに永久凍土の解凍を進めるという悪循環が起こるらしい。「……年後、首都東京の猛暑日の気温は43℃に及ぶのではないか?」とも。何年後であるのかは怖ろしくて書けない。

もはや亜熱帯どころではなく、熱帯化するわが国において、食料の栽培・養殖・収穫・加工・保存・移送などに関与する農業・漁業・食品業界はもちろんのこと、衣料・土木・建築業界など、衣食住に関連するすべての業界がまさに生き残りを賭けた転向を図らねばならないであろう。そして、われわれ医療界も、その対応を急がねばならない。

筆者が1983年ロンドン大学のRPMSに留学したとき、インドから留学していたラボの同僚の伴侶は、同じくKing’s Collegeにある「熱帯医学研究所」に留学していた。旧盟主国であった英国のその思惑とはまったく別の意味で、わが国の医学教育や医療者の研修においても、熱帯由来の風土病や感染症とその対策、そして熱中症の病態解明と、とりわけ高齢者対策などのカリキュラムを盛り込む必要があると思われる。

また馬齢を重ねたわが身からして、「……年後」などおそらく自分は? と思いながらも、このエッセイが杞憂に終われば良いのにと祈る新春である。

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