私の専門とする呼吸器領域では肺非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacteria:NTM)が増加の一途を辿っており、最近の報告では罹患率は14.7/人口10万人と報告され、菌陽性結核の罹患率(10.7/10万人)を超えている。その多く(約90%)はMycobacterium avium complex(MAC)であり、画像所見によって結節・気管支拡張(nodular bronchiectatic:NB)型と上葉を中心に空洞を呈する線維空洞(fibrocavitary:FC)型の2病型に大別される。後者は肺組織の破壊が進行し、早期に呼吸不全に至る重症型である。しかし、こういった重症型が認識されるようになったのは、比較的最近のことである。
この患者に出会ったのは2004年11月のことであった。着任したばかりで前任者から引き継いだ当時38歳の男性で、2001年11月に肺MAC症と診断されCAM+RFP+EB+SMのフルコースの治療を受けていた。しかし、なかなか排菌はなくならず、ガフキー10号が継続していた。各種のニューキノロン剤も追加してみたが、効果はなかった。左上葉に空洞を伴う浸潤影・粒状影を認めた(写真上)。結局、2006年7月に呼吸不全のために亡くなった。
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