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医療におけるinnovationを生み出すには [エッセイ]

No.4839 (2017年01月21日発行) P.72

村山雄一 (東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座主任教授)

登録日: 2017-01-22

最終更新日: 2017-01-17

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現在、医療機器は多くが輸入製品であり、約6000億円を超える貿易赤字が拡大しています。近年、国策としても国産医療機器開発の重要性が叫ばれるようになり、様々な規制緩和も進みつつありますが、まだ十分な成果が上げられていないのが実情です。私は日米で医療機器開発に携わった経験からか、ここ数年、AMEDや特許庁などで医療機器開発促進のためのお手伝いをさせて頂いております。

医療におけるinnovationを生み出すには、現場の問題点を指摘し、それを解決するためのアイデアを生み出せる人材育成が鍵となります。一方で、現在の医学生教育は、我々の学んだ時代以上の情報量を処理することが求められ、医師国家試験やその後に待ち受けている専門医試験まで「標準的治療」を身につけることを求められます。すると、学生時代からレジデントまで、30歳すぎまでinnovativeなマインドを身につけるような教育を受ける余裕がありません。

そこで普段、学生のポリクリでは少しでもinnovationを生み出せる人材を育成するよう、手術レポートは教科書を読めば書いてある適応や術式は一切記載する必要はない、私たちの手術をみて(感じて)、今時の学生風に言えばその手術のイケてないところ、つまり問題点を見つけなさい、そしてその解決策、新しい手術法を考えてきなさい、と指導しています。すると、4~5人に1人は海外で治験中だったり、国際学会でコンセプトを発表されたものと同じようなアイデアを出してくるのです。つまり、医学教育の中でも課題解決型といわれて久しいのですが、若い学生や医師がアイデアに乏しいわけではないことがわかります。欠けているのはinnovationを現場の医療まで発展させるシステムと全体を見渡せ指導できる旗振り役、コーチです。なかなかそうした人材が少ないことが課題だと思います。

そこで、ラグビーやサッカーのように外国人の経験豊かな人物を招聘するというのも一案でしょう。innovationに不可欠な知的財産とは何かを学ぶために、特許庁の方々に講義をお願いしたり、医療機器産業の方々から学ぶことも多いと思います。

こんなちょっと本流から外れた教員が一人くらいいてもいいでしょうと、勝手に都合よく考えて本年も学生に接していきます。

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