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昔の人はえらかった [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(135)]

No.4841 (2017年02月04日発行) P.74

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2017-02-04

最終更新日: 2017-01-31

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  • 世界で初めて化学発がんに成功した山極勝三郎の伝記映画『うさぎ追いし』を観に行った。相当に偏屈な人であったようだし、発がん実験も地味なものである。はたして映画になんぞなるのかと思ったが、山極を演じる強面の個性派俳優・遠藤憲一の好演もあって、いい映画になっていた。

    文字通り命を賭けて研究するというストーリーもさることながら、一世紀ほど前の医学部や医学界の状況を垣間見られるのがえらく面白かった。脚色もあるだろうが、教授はすごく立派で偉そうにしていた。

    実際に実験を行った市川厚一もかなり変わった人だったらしいが、そのあたりもユーモラスに描かれている。実験に使われたウサギ小屋の状況や、コールタールをウサギの耳に塗擦するやり方も、なるほどそんなだったのか、というところだ。

    山極・市川の発表から17年後の1932年、佐々木研究所の佐々木隆興と吉田富三が、アゾ色素によるラットの肝臓がん作成に成功している。いくつもの化学物質からなるコールタールと違って、単一の化学物質で悪性腫瘍が生じうるという大きな発見だ。

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