日本医師会の医療政策シンポジウムが8日、「社会保障と経済の好循環」をテーマに開かれ、医療提供体制・医療保険制度の改革に深く関わる有識者らが意見を交わした。総合討論には、政府の経済財政諮問会議で社会保障改革に関して積極的に発言する民間議員も参加した。
総合討論で議論の中心の1つとなったのは、政府の経済財政諮問会議が主導する、データを用いて地方交付金等の使途を「見える化」する取り組みだ。
諮問会議民間議員の新浪剛史氏(サントリーホールディングス代表取締役社長)は、見える化を急ぐ事項として、1人当たり医療費の地域差に言及。「高齢化率や過疎化率が同等の地域でも相当の差があることが分かってきた。効果的なお金の使い方をする自治体には正のインセンティブ、そうでない自治体には負のインセンティブを与え、国庫支出の配分を変える仕組み(ワイズスペンディング)を導入すべきだ」と強く主張した。地域差が生じる要因については、「ベッドがあるから入院する」として、病床数を挙げた。
地域差「データに表れない要因の影響も」
社会保障審議会医療保険部会の部会長を務める遠藤久夫氏(学習院大経済学部教授)は、「(見える化に活用される)レセプトデータはいわば請求書の集まりで、医療の総体をそのまま表しているわけではない。医療費の地域差には、データで把握しきれていない要因の影響も考えられる」と指摘。日医会長の横倉義武氏は、自身が地元の福岡県で医療費の地域差分析に携わった経験から、「見える化の作業は各地域の歴史的背景にまで踏み込む必要があり、短兵急にはできない」との見解を示した。
見える化とそれに基づく改革を進める速度に関しては、新浪氏も「1年などの短期間では無理だ」と述べた。
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