小児CKD対策の意義は早期診断に加え,原疾患に特異的ではない管理・治療法である
CKDは全身疾患であり,合併症管理として腎以外の多臓器に対する配慮も重要である
小児の特徴である成長・発達を含めて,蛋白制限食や運動制限の意義を考える
治療決定の主体は患者・家族にあることを伝え,患者と家族の幸せを最優先に考える
慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の定義から考えると,小児では腎臓小児科医が扱う疾患のうち急性のもの(急性糸球体腎炎や急性腎不全など)を除いたほぼすべての腎尿路疾患が小児CKDということになる。個々の疾患については,これまで多くの臨床家や研究者が治療について検討してきた。基本的には,CKDの考え方は疾患特異的ではなく,慢性に経過する腎臓病をいかに早期に発見して特異的な疾患の診断・治療への足掛かりとするか,また網羅的な管理・治療法を検討して必要な介入を行い不必要な介入を避けることによりいかに有意義な人生を送ってもらうか,という視点にある。
小児CKD対策の1つの大きな意義は早期診断にある。これについては別稿にゆずる。ただし,明確な診断基準の周知は,小児科医,家庭医,腎臓小児科医,小児泌尿器科医やそのほかの小児に関係する保健・医療関係者にとって重要であり,適切な早期診断・治療は疾患の進行を阻止し腎機能悪化を遅らせ合併症を防ぐ武器となることを強調しておく。
もう1つの意義は,原疾患に特異的ではない管理・治療法である。それぞれの疾患に特異的な治療法は,これまでも十分に検討されてきておりCKDの予後を改善してきたと考えられ,腎臓小児科医にとっては最も重要なスキルである。しかし,非特異的な管理・治療法についても多くの重要な視点がある。腎機能障害を進行させる重要な2つの要因は高血圧や蛋白尿と考えられている。成人では,糖尿病によるものを除いた腎症に対してのアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の腎保護効果の有効性が証明されており1)〜3),小児においても質の高い多施設臨床試験が待たれるところである。また,CKDは全身疾患であり,合併症管理として腎以外の多臓器に対する配慮も重要である。
ほかの視点では,生活管理(運動や食事),成長や発達,患者や家族の精神・社会面,患者や家族の人としての尊厳の尊重,インフォームドコンセント(IC),移行(transition)など,管理上重要な介入についても考慮されなくてはならない。CKDの子どもたちと家族の人生を,医師らが関わることによって医原的に不幸なものにしてはならない。個々の腎疾患の診断・治療の成熟に加えて,不幸にもCKDとともに人生を送らなければならなくなった患者に対して,1人の人として総合・全人的な医療を提供することが小児CKD対策の重要な意義である。
慢性腎不全児の治療は初期(CKD stage 2~4)には腎保護を,後期(CKD stage 3~5)では合併症の予防と治療を目的に行われる。stage 5となると透析療法〔腹膜透析(peritoneal dialysis:PD),血液透析(hemodialysis:HD)〕や腎移植といった腎代替療法が必要になる。慢性腎不全は徐々に腎臓が正常に働かなくなることによる全身病であり,腎臓小児科医がどのような合併症を考えて治療にあたったらよいかを図1に示した。透析・移植をはじめとした慢性腎不全医療の進歩は目覚ましく,治療目標は延命から心身の健康へと変化した。子どもたちの将来像を親とともに共有して治療計画を立てることが重要である。
薬物療法の際に注意すべきことは,腎機能に依存した薬物代謝のみられる腎排泄性薬剤の投与である。また,透析中は薬物の透析性を考慮して投与計画を立てる。
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