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腸内細菌学の展開とパーキンソン病との関係 【パーキンソン病では小腸内で病態に悪影響を及ぼす細菌が増殖しやすい】

No.4844 (2017年02月25日発行) P.60

渡辺宏久 (名古屋大学脳とこころの研究センター特任教授)

登録日: 2017-02-22

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  • 腸内細菌学の展開とパーキンソン病との関係およびその治療的応用についてご教示下さい。

    (質問者:宮城県 H)


    【回答】

    ここではパーキンソン病と腸内細菌の関係として,①小腸の細菌増殖およびHelicobacter pylori(H. pylori)感染が運動合併症に及ぼす影響,②腸内細菌叢の状態が発症や病型に及ぼす影響,について触れてみます。

    まず,パーキンソン病では健常者に比して,小腸の細菌増殖の頻度が高いと報告されています1)。一般に小腸は胃酸による細菌の破壊,胆汁や膵液の分泌による細菌増殖の抑制,小腸の動きの速さ,小腸筋層の細菌を取り込む働き,回盲弁による大腸から小腸への細菌流入の防止などにより細菌が増殖しづらい環境となっています。一方,パーキンソン病では消化管や回盲弁の動きの悪化,さらには抗パーキンソン病薬やプロトンポンプ阻害薬の内服などが原因となり小腸で細菌が増殖しやすいと考えられています。小腸の細菌増殖の臨床像は,下痢,腹痛,腹部膨満,体重減少,早期の満腹感,吐き気,便秘,排便障害,脂溶性ビタミン欠乏,ビタミンB12や鉄欠乏などであり,パーキンソン病の症状と類似しているため注意が必要です。

    パーキンソン病で特に問題となるのは,小腸の細菌増殖がH. pylori感染と並んで運動合併症の原因となりうる点です。L-ドパはアミノ酸の一種で,酸性で溶解しやすく,また,中性あるいは塩基性で溶解しにくく,小腸上部で吸収されるという特徴を有します。このため,H. pylori感染や小腸の細菌増殖でL-ドパの吸収が悪化し,不安定になる可能性があります。実際,H. pylori感染と小腸の細菌増殖を除菌するとオフ時間短縮やオフエピソード軽減が得られるという報告があります2)

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