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ワクチン外来にて [プラタナス]

No.4848 (2017年03月25日発行) P.1

菅沼明彦 (杏林病院内科)

登録日: 2017-03-24

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  • 私は、大学卒業直後より、地元・長崎の民間病院で従事していたが、卒後10年目より都立駒込病院で感染症を勉強する機会をいただいた。一般感染症に加え、当時、他の医療機関ではなかなか勉強できない特色ある領域も経験し、HIV感染症、輸入感染症などに加えて、予防接種も勉強させていただいた。ワクチン外来の“門前の小僧”として勉強を始めてみると、この領域の奥深さが徐々に感じられるようになった。

    ワクチンは感染を防ぐため事前に接種するが、接触後の“発症予防”として実施されることもある。麻疹、水痘、B型肝炎、破傷風などが対象となるが、駒込病院では、特に狂犬病の曝露後発症予防の希望者が数多く受診する。2006年の輸入狂犬病例の発生時には、全国的に狂犬病ワクチンが供給不足となったため、曝露後発症予防に対応する医療機関として、東京都から指定されたこともあった。

    日本は狂犬病清浄国であるが、世界的には狂犬病常在国が大多数である。常在国での動物咬傷の受傷時には、狂犬病ワクチンの速やかな接種を要する。ご存知の通り、狂犬病は発症すると死亡率がほぼ100%であり、救命には予防しかない。近年は組織培養ワクチンが使用されており、有効性が高く、重篤な副反応は極めて稀である。しかし、現在でも途上国の一部地域では、動物脳を用いた安価なワクチンが使用されている。この旧式ワクチンは予防効果が低いだけでなく、強い局所反応や中枢神経系副反応などの問題がある。「狂犬病ワクチンは副作用が強くて怖い」というのは、旧式ワクチンの悪いイメージに他ならない。

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