昨日,学会の準備で睡眠不足の研修医Aくんは,救急外来でトイレに行く時間も惜しみながら患者さんを診ている。もうヘトヘトになっているはずだが,休みたいという気持ちが出てこない。
そんなとき「わけのわからないことを言うので精神病ではないか」と家族が思って連れてきた患者さんを診察した。昼間に受診した病院では「CTも異常ないので精神科にかかるように」と言われたそうだ。家族は検査と入院を希望している。Aくんは上級医を呼ばず,昼間に病院で出たという指示を繰り返そうとしたが,看護師から上級医に相談してみてはどうかと言われた。そこで相談し,検査をした結果は右側頭葉の広範囲梗塞であった。患者家族(心理学用語でクライエント)のほうが「治療者」であった例である。
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