法隆寺、薬師寺の宮大工棟梁だった西岡常一氏のエッセイ。木、道具、建築を通して日本の伝統的な文化が感じられる書(西岡常一著、小学館、1988年刊)
『木に学べ』は、最後の宮大工棟梁とされる西岡常一氏からの聞き書きという形で、1985年から小学館のアウトドア月刊誌「BE-PAL」に連載されたものである。最初に読んだときは、その道を究めた人ならではの興味深い事実に感動したものであるが、読み直してみると、その分野以外のことも正確に評価していることに驚いた。
1985年という日本でバブル景気が始まった頃、「今の大工は耐用年数のことなんか考えておりませんで、今さえよければいいんや。……わたしら千年先を考えています。資本主義というやつが悪いんですな。利潤だけ追っかけとったら、そうなりまんがな」と、関西なまりですごいことを言っている。「科学が発達したとゆうけど、わしらの道具らは逆に悪うなってるんでっせ。……飛鳥の時代から一向に世の中進歩していませんな」とも。科学も文明も進歩していると無意識に思っているが、見る人が見るとそうではないようだ。
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