過去を振り返ってみて、あの時の出来事が自分にとって重要なターニングポイントになっていたということが、誰にでもあるのではないだろうか。
私にとってそれは、医師になって間もなく総合病院のただ1人の皮膚科医として勤務していた時のことである。ある日、小児科の先生から、9歳の少女にみられた皮膚病変の診察を依頼された。その少女は再生不良性貧血に罹患して入院中であった。少女の前腕には、点滴用注射針を固定するための包帯部位に、膿痂疹様の病変が数箇所みられた(写真)。小児科の先生の話では、皮疹部に抗生物質加ステロイド軟膏を外用していたが、かえって増悪したとのことであった。そこで、病変部皮膚を採取して苛性カリでの直接鏡検を試みたところ、菌糸様のものが無数にみられ、真菌由来の病変であることが強く疑われた。
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