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パーキンソン病治療のup-to-date[内科懇話会]

No.4861 (2017年06月24日発行) P.36

司会: 水野美邦 (順天堂大学名誉教授)

演者: 服部信孝 (順天堂大学脳神経内科教授)

登録日: 2017-06-23

最終更新日: 2017-06-21

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  • 【司会】水野美邦(順天堂大学名誉教授)
    【演者】服部信孝(順天堂大学脳神経内科教授)

    パーキンソン病の主症状は振戦,筋固縮,無動,姿勢反射障害である

    嗅覚障害,便秘,睡眠障害などの症状発現の後,パーキンソン病が発症する

    最近では,ゲル化したL-ドパを,胃瘻を通じて持続的に注入する治療法が開発された

    脳深部刺激療法(DBS)はドパの反応性が非常に効く患者には効果的である一方,高次脳機能障害が悪くなるということも,一部の患者で指摘されている

    パーキンソン病は振戦,筋固縮,無動,姿勢反射障害を主症状としています。このうち2つ以上症状がある場合にパーキンソン病を疑いますが,ほとんどが孤発型で,遺伝性パーキンソン病は約5~10%と言われています。

    パーキンソン病は間違いなく,高齢になるほど発症頻度が上がります。超高齢社会を迎え,今後,高齢のパーキンソン病患者の増加が予想されており,2030年までにパーキンソン病患者数が全世界で3000万人に達すると予測されています。

    また,パーキンソン病はアルツハイマー病についで発症頻度の高い変性疾患ですが,比較的若く発症する若年性のものから,60~70歳で発症するものまで,発症年齢は多岐にわたっています。そして,パーキンソン病の患者には,非常にまじめな方が多い,ということが言われています。

    パーキンソン病の自然経過

    パーキンソン病の自然経過は,これは治療も含みますが,pre-motor phaseには嗅覚障害,便秘,睡眠障害などの症状があり,そのあとに症状が出現し,診断されます(図1)。治療有効期間(honeymoon期)の後,3~5年でステージが1つずつ上がります。パーキンソン病のステージは1~5まであり,ステージ3以降を進行期と呼び,ジスキネジア,wearing offといった運動合併症状がみられます。さらに進行すると,薬の効いている時間が非常に短くなり,自律神経障害,認知症,転倒などが出現します。

    現在,最も注目されているものは,prodromal stageという症状です。睡眠をはじめとする非運動症状,自律神経症状,うつ,嗅覚低下,疲労,痛みといった症状があって,そのあとに症状が明確になって診断・治療に至ります。この時期が細胞脱落の速度が最も速い時期であると言われています。よって,主な症状が出る前の段階で治療をすることが最も良いだろうと言われています。


    パーキンソン病の原因

    現在,パーキンソン病発症の可能性が最も高い因子は,遺伝因子と加齢です。そこに環境因子として農薬,外傷,あるいはライフスタイルが同様に影響し発症するのではないか,と言われています。パーキンソン病はParkinson’s diseasesと複数形で言ったほうがよいくらい,一人ひとりの症状が異なります。ライフスタイルのほうがメインに強かったり,遺伝学的な要素あるいは加齢が強かったりと,非常に多様性のある疾患であると考えられています。

    その中で,私ども順天堂大学のグループでは世界で2番目に,若年性パーキンソン病としては世界で初めて,PARK2遺伝子を慶應義塾大学の,今は亡き清水信義先生との共同研究で見出すことができました。これは染色体6番に存在する,常染色体劣性型の遺伝性パーキンソン病の遺伝子です。また,2015年に順天堂大学のグループが中心となって,CHCHD2という遺伝子を見出しました。いずれも遺伝性のタイプはいくつかあり,頻度は少ないのですが孤発型の病態と共通点を持つという意味で重要です。

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